緩和ケア病棟に移ると決めたとき|在宅の看病から父を送った家族の体験
緩和ケア病棟に移るかどうかは、本人の希望と、自宅で看る側の負担の大きさをあわせて考えます。わが家は、祖母のときから緩和ケアを知っていた父の希望どおり、母と訪問介護で続けた自宅での看病の負担が大きくなったところで緩和ケア病棟に移り、父は最後の二ヶ月を穏やかに過ごしました。
この記事の要点
- 緩和ケア病棟は、がんを治す治療ではなく、痛みやつらさを和らげる治療とケアを行う病棟
- 移る判断では、本人の希望と、自宅で看る側の負担の両方を考える
- 長期療養の場ではなく、部屋や費用が思いどおりにならないこともある
緩和ケアって、あきらめること?
母が自分の緩和ケアの希望を話しだし、大阪の長男はうろたえるばかり。次女が、移る前に家族で確かめたいことを整理します。




セリフを文字で読む
- 1コマ目
- ハナ:私も、いざとなったら緩和ケアでお願いね!
- ケン:えっ、緩和ケアって…あきらめるってこと!?
- 2コマ目
- エリ:ちがうよ。痛みやつらさを和らげる病棟。お父さんも最後は穏やかだったでしょ
- 3コマ目
- エリ:移る前に確かめるのは3つ。①本人と家族が希望している ②申し込みに書類と判定が要る ③有料の個室代は保険がきかない
- 4コマ目
- ハナ:だから元気なうちに話しとくのよ!
- ケン:…母さんのほうが準備できてるやん
漫画:親のこと帳編集部。登場する人物・団体はフィクションです。漫画の画像はCC BY 4.0で提供しています。
父は膵臓がんと分かってから1年半の闘病の末、最後の二ヶ月を日本赤十字社医療センター(東京都渋谷区)の緩和ケア病棟で過ごしました。僕は大阪に住む長男です。
自宅での看病を続けるか、緩和ケア病棟に移るか。この記事では、わが家がどんな流れで緩和ケア病棟に移ると決めたかと、決めるときに家族で考えておきたいことをまとめます。入院の条件や費用は、それぞれ別の記事で詳しく書いています。
緩和ケア病棟とは
緩和ケア病棟は、主にがんの患者さんを対象に、からだと心のつらさを和らげる治療とケアを行う病棟です。国立がん研究センターのがん情報サービスによると、「ホスピス」も同じような意味で使われますが、緩和ケア病棟は終末期に限らず、症状を積極的にコントロールする場でもあります。医療費は健康保険の対象です。
「緩和ケアに移る」と聞くと、治療をあきらめることのように感じる人もいるかもしれません。緩和ケア病棟は、がんを治すための治療はしない代わりに、痛みや息苦しさ、気持ちのつらさを和らげることに力を注ぐ場所です。
わが家の場合:在宅の看病から緩和ケア病棟へ
祖母のときから、緩和ケアを知っていた
緩和ケアのことは、祖母(母の母)がお世話になったので、父も母も知っていました。二人とも、いざというときは緩和ケアに、と希望していました。
抗がん剤を使わず、好きなものを食べ続けた父
治療の方針は、医師と相談しながら家族で話し合い、父には抗がん剤を使わないことにしました。父は最後まで食欲を失わず、カツ丼や鰻、寿司など、好きなものをおいしそうに食べていました。
母と訪問介護で、自宅での看病を続けた
自宅での看病は、母と訪問介護で続けていました。病状が進むにつれて、自宅で看病を続けるのは、看る側の負担が大きくなっていきました。そこで、緩和ケア病棟に移ることを決めました。
緩和ケア病棟で、父は穏やかに過ごせた
緩和ケア病棟では痛みのコントロールが行き届いていて、父は穏やかに過ごしていました。スタッフの方々が父の介助をしてくださったので、家族は看病で疲れ果てることなく、父のそばで家族として過ごすことができました。
日本赤十字社医療センターの皆さまには、本当に感謝しています。
移るかどうかを決めるときに、家族で考えておきたいこと
本人の希望を、元気なうちに聞いておく
日本赤十字社医療センターのように、本人と家族ががんであることや治すことが難しいことを理解し、入院を希望していることを入院の前提にしている緩和ケア病棟があります。わが家の場合は、祖母のときのことがあって、本人の希望が前から分かっていました。親が元気なうちに、どこで、どう過ごしたいかを聞いておくと、いざというときの支えになります。
看る側の負担も、判断の材料にしてよい
自宅での看病は、続けるほど看る側の負担が重くなります。看る側が限界になる前に、緩和ケア病棟という選択肢を家族で話しておくと、決めるときに慌てずに済みます。在宅療養を支える家族の休息のための短期の入院(レスパイト入院)を受け入れている病棟もあります。
長くいる場所ではないことも知っておく
日本赤十字社医療センターの案内では、緩和ケア病棟は長期療養のための病棟ではなく、症状を和らげて自宅や施設に戻ることを目標にしている、とされています。症状が落ち着くと、退院や転院を勧められることもあります。
部屋と費用は、思いどおりにならないこともある
わが家は無料の個室が空いておらず、有料の部屋に入りました。入院料と個室代の違い、高額療養費の対象になるものとならないものは、緩和ケア病棟の費用の記事にまとめています。
迷ったときの相談先
がん相談支援センターは、全国のがん診療連携拠点病院などにある、がんの相談窓口です。国立がん研究センターのがん情報サービスによると、その病院にかかっていなくても、だれでも無料で相談できます。緩和ケア病棟のある病院を探したいときや、移るかどうか迷うときに相談できます。
申し込みの条件と流れは、緩和ケア病棟の入院条件と申し込みの流れの記事にまとめています。
よくある質問
緩和ケア病棟に移ると、治療はもう受けられないのですか?
がんを治すための治療(抗がん剤など)は行いませんが、痛みや息苦しさなどのつらさを和らげる治療とケアは受けられます。緩和ケアは終末期に限らず、症状を積極的にコントロールする医療でもあります。
緩和ケア病棟に移るのは、どんなタイミングですか?
病院ごとに入院の基準がありますが、がんを治す治療が難しくなった、あるいは治療を希望しないことを本人と家族が理解し、入院を希望していることが前提になります。わが家は、自宅での看病で看る側の負担が大きくなったときに移ることを決めました。
関連する記事
出典
- 国立がん研究センター がん情報サービス「緩和ケア病棟」(新しいタブで開きます)(2026年11月1日に確認)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「がん相談支援センターにご相談ください」(新しいタブで開きます)(2026年11月1日に確認)
- 日本赤十字社医療センター「がんで緩和ケア病棟申し込みをお考えのみなさまへ」(新しいタブで開きます)(2026年11月1日に確認)