菩提寺があっても宗教者を呼ばなかった|戒名なしのお葬式と、事後報告のこと
菩提寺があっても、宗教者を呼ぶか、戒名をつけるかは家族で決められます。ただ、菩提寺の境内の墓地に納骨するときは、お寺の宗派のやり方で納骨することを求められる場合があり、法律上もそれは認められています。わが家は宗教者を呼ばず戒名もつけず、菩提寺には法要の連絡が来たときに伝えましたが、対応は事務的なものでした。
この記事の要点
- 菩提寺があったが、宗教者は呼ばず、戒名もつけなかった
- 菩提寺には前もって知らせず、法要の連絡が来たときに伝えたら、事務的な対応だった
- 寺院の墓地は、ほかの宗教であることだけを理由に納骨を断れないが、納骨の儀式をお寺の宗派のやり方で行うよう求めることはできる
お寺には、いつ伝えた?
お寺から法要の案内の電話が来たのをきっかけに、母と次女が菩提寺と戒名のことを話します。




セリフを文字で読む
- 1コマ目
- ハナ:法要のご案内ですか。実は、主人のお葬式はもう…
- 2コマ目
- ハナ:事務的なお返事だったわ
- エリ:そっか。伝えられてよかったね
- 3コマ目
- エリ:宗教者を呼ぶか、戒名をつけるかは家族で決められるよ
- エリ:お寺の墓地に納骨するなら、お寺のやり方を求められることもあるんだって
- 4コマ目
- ハナ:じゃ、お墓のことは子どもたちに任せたわ!
- エリ:急に丸投げ!?
漫画:親のこと帳編集部。登場する人物・団体はフィクションです。漫画の画像はCC BY 4.0で提供しています。
僕は大阪に住む長男です。父は緩和ケア病棟で最後の二ヶ月を過ごし、亡くなりました。
わが家には菩提寺があります。父と縁のある、昔から付き合いのあるお寺で、先祖のお墓はそのお寺の境内の墓地にあります。それでも父のお葬式には宗教者を呼ばず、戒名もつけませんでした。お寺には、あとから伝えています。
「菩提寺があるのに、それでいいのか」と迷う人は多いと思います。この記事では、わが家がどう決めて、お寺にどう伝えたかと、戒名なしで菩提寺の墓に納骨するときに知っておきたい決まりをまとめます。
菩提寺と、寺院の墓地
菩提寺は、先祖代々のお墓があり、葬儀や法要をお願いしてきたお寺のことです。お墓がお寺の境内にある場合、その墓地は「寺院墓地」と呼ばれます。
厚生労働省(当時は厚生省)が平成12年に示した「墓地経営・管理の指針等について」では、墓地を、自治体が経営する公営墓地、寺院が檀家のために設けた寺院墓地、宗派を問わない事業型墓地などに分けています。そのうえで、寺院墓地には、お寺と檀家という宗教による特別な結びつきがあることにも触れています。墓地をどう使えるかは、それぞれの墓地の「墓地使用規則」などで決まっていて、これは実質的には墓地とお墓の持ち主との契約にあたる、とも書かれています。
わが家の場合:宗教者を呼ばず、お寺にはあとから伝えた
宗教者を呼ばず、戒名もつけなかった
父のお葬式は、母と子ども、孫たちだけで行いました。宗教者は呼ばず、戒名もつけていません。
父は、宗教の形式にこだわらない人でした。お寺と付き合いがあることと、父らしい見送り方は、家族の中では別のことでした。お葬式は亡くなった父と、残された家族のためのものです。家族みんなが納得できる形を選ぶことを、お寺の慣習より優先しました。
お葬式の様子は、家族だけで見送ったお葬式の記事に書いています。
お寺には、法要の連絡が来たときに伝えた
お寺には、お葬式の前にも直後にも連絡をしていません。お寺から法要の連絡が来たときに、父が亡くなったこと、宗教者を呼ばずに家族だけで見送ったことを伝えました。
お寺の対応は、事務的なものでした。
遺骨は、菩提寺の墓には納めていない
父の遺骨は、まだ菩提寺の墓には納めていません。いまは実家に安置しています。菩提寺の墓は遠く、家族は墓じまいを考えています。
遺骨を自宅に置いていることは納骨しない選択の記事に、墓じまいのことは遠くの墓を墓じまいして、通いやすい場所にお墓を設けるの記事に書いています。
戒名なしで、菩提寺の墓に納骨できるのか
わが家はまだ納骨していませんが、菩提寺の墓に納骨するつもりの家族にとっては、ここがいちばん気になるところだと思います。法律と国の通知では、次のように整理されています。
ほかの宗教であることだけを理由に、断ることはできない
墓地埋葬法(墓地、埋葬等に関する法律)は、墓地の管理者は、埋葬や遺骨を納める求めを受けたとき、正当な理由がなければ断ってはならないと定めています(第13条)。
この「正当な理由」について、厚生省は昭和35年の通知で、内閣法制局の考え方を示しています。宗教団体が経営する墓地でも、依頼した人がほかの宗教の信者であることだけを理由に断るのは、正当な理由とは認められない、というものです。
ただし、納骨の儀式はお寺の宗派のやり方でと求められる
同じ通知は、続けてこうも述べています。ここでいう埋葬や納骨は、遺体や遺骨を土に納めること自体を指していて、宗派の儀式は含まない。お寺が「納骨はこの宗派の儀式で行う」と決めることは許され、儀式のやり方については、墓地の管理者は依頼した人の希望に応じる義務はない、というものです。お互いが儀式のやり方を譲らなければ、依頼した人は納骨をあきらめざるを得ないこともある、とまで書かれています。
つまり、お寺は「戒名がない」「宗教者を呼ばなかった」ことだけを理由に納骨を断ることはできませんが、納骨のときにお寺の宗派の儀式で行うよう求めることはできます。
法律に、戒名の定めはない
墓地埋葬法とその施行規則には、戒名についての定めはありません。戒名がないと納骨できない、という決まりは法律にはありません。
実際に何を求められるかは、お寺の考え方と、その墓地の使用規則によって違います。菩提寺の墓に納骨するつもりなら、納骨の前にお寺に相談し、儀式をどうするか、戒名について何か求められるかを確かめておくと安心です。
菩提寺に伝えるときに、考えておきたいこと
いつ、どう伝えるか
わが家は、お寺から法要の連絡が来たときに伝えました。
ただ、これから菩提寺の墓に納骨するつもりなら、お葬式の前に相談しておくほうが、あとの話がしやすい場合もあると思います。宗教者を呼ばないこと、戒名をつけないことを先に伝えておけば、納骨のときにどうするかを落ち着いて話し合えます。
墓地の使用規則と、管理料を確かめる
寺院墓地を含め、墓地の使い方は墓地ごとの使用規則などで決まっています。厚生省が平成12年に示した標準的な契約の例では、お墓の持ち主が毎年管理料を払うこと、持ち主が亡くなってお墓を受け継いだ人は墓地の経営者に届け出ることなどが定められています。お墓の持ち主が亡くなったときは、だれがお墓を受け継ぐかと、管理料の支払いがどうなるかも、あわせて確かめておきます。
墓じまいをするときの、お寺とのお金のこと
国民生活センターには、菩提寺に墓じまいを頼んだら高額な離檀料を求められた、という相談も寄せられています。墓じまいを考えているなら、お寺との関係やお金のことも含めて、家族で早めに話しておくことをおすすめします。詳しくは遠くの墓を墓じまいして、通いやすい場所にお墓を設けるの記事にまとめています。
よくある質問
菩提寺があるのに、宗教者を呼ばなくてもいいのですか?
宗教者を呼ぶかどうかは家族で決められます。わが家は菩提寺がありましたが、宗教者を呼ばず、戒名もつけませんでした。ただし、菩提寺の墓に納骨するときは、お寺の宗派の儀式で行うよう求められることがあるので、前もって相談しておくと安心です。
戒名がないと、菩提寺の墓に入れないのですか?
法律には、戒名がないと納骨できないという定めはありません。国の通知でも、ほかの宗教の信者であることだけを理由に納骨を断るのは正当な理由にならないとされています。ただ、納骨の儀式をお寺の宗派のやり方で行うよう求めることは認められています。何を求められるかはお寺によって違うので、納骨の前に確かめます。
お寺に事後報告をしたら、怒られませんか?
お寺によって受け止め方は違うと思います。わが家の場合は、法要の連絡が来たときに伝え、対応は事務的なものでした。
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出典
- 墓地、埋葬等に関する法律 第13条(e-Gov法令検索)(新しいタブで開きます)(2026年11月1日に確認)
- 厚生労働省 法令等データベース「墓地、埋葬等に関する法律第十三条の解釈について」(昭和35年3月8日 衛環発第8号)(新しいタブで開きます)(2026年11月1日に確認)
- 厚生労働省「墓地経営・管理の指針等について」(平成12年12月6日 生衛発第1764号)(新しいタブで開きます)(2026年11月1日に確認)
- 国民生活センター「墓・葬儀サービス」(新しいタブで開きます)(2026年11月1日に確認)